【元人事課長の裏話】「今辞めたら損害賠償だ」は本当?強引な退職引き止めへの対処法と、“法律の強行突破”が持つ危険性
1.会社からの「辞めたら損害賠償を請求する」「離職票を出さない」といった脅し文句の裏側(会社のホンネ)が分かります。
2.「就業規則(1か月前の申出」と「法律(2週間前の申出)」ではどちらが優先されるのか、その明確な結論を知ることができます。
3.法律を盾にして「明日から行きません」と強引に辞めることが引き起こす、リアルな3つのリスク(デメリット)が分かります。
4.後腐れなく確実に辞めるための「したたかな退職戦略」や、自力での解決が難しい時に取るべき具体的な行動が分かります。
“法律の強行突破”が持つ危険性
「退職したいと伝えたら、上司に怒鳴られて退職届を突き返された」
「今辞められたらプロジェクトが回らない。損害賠償を請求するぞと脅された」
年度末に近い2月に入ってから、大阪労働問題解決支援センターにはこうした労働者からのSOSが増え始めました。人手不足が深刻な昨今、企業側も必死になるあまり、違法スレスレ(あるいは完全に違法)な引き止めを行うケースが後を絶ちません。
今回は、特定社労士でもあり、人事の裏側を知り尽くした実務家の視点から、会社側の「脅し」のカラクリと、法律と就業規則のどちらが強いのか、そして「法律を振りかざして無理やり辞めることの本当の恐ろしさ」について解説します。
1.【実例】会社側の「脅し」は、99%がただのハッタリ
まず結論から言います。退職を引き止める際の会社側の過激な発言は、人事のプロから見れば「ただのハッタリ(脅し)」であることがほとんどです。
よくある実例とその裏側をお話しします。
脅し文句①「途中で投げ出すなら、会社への損害賠償を請求する!」
【会社のホンネ】 労働者が普通に退職を申し出ただけで、会社に損害賠償請求が認められるケースは裁判実務上「ほぼゼロ」です。労働基準法第16条でも、「途中で辞めたら○○万円支払え」といった損害賠償額をあらかじめ定めることは禁じられています。もちろん、実損害額が出た場合の賠償請求自体が禁止されているわけではありませんが、単なる退職で「会社にいくらの損害が出たか」を法的に立証するのは極めて困難です。会社側も「実際に裁判を起こしても勝てないし弁護士費用で大赤字になる」と分かっていながら(分かっていない例もあります)、あなたを怖がらせるために言っているだけです。
脅し文句②「退職届は絶対に受理しない。離職票も出さないからな!」
【会社のホンネ】 そもそも退職は「会社の許可(受理)」が必要なものではありません。労働者からの「一方的な通告」で成立します。また、離職票の交付は雇用保険法で定められた会社の「義務」です。もし会社が意地悪をして出さなくても、ハローワークに事情を話せば、職権で離職票を発行してもらえます。
会社側は、あなたが「法律を知らない」ことを前提に、プレッシャーをかけているに過ぎないのです。
2.「民法」vs「就業規則」どちらが優先される?
ここでよく問題になるのが、「退職の申出時期」です。
会社の就業規則には「退職する場合は、1ヶ月前(あるいは2ヶ月前)までに申し出ること」と書かれていることが一般的です。
一方で、法律(民法第627条)では「期間の定めのない雇用契約(正社員など)は、2週間前に退職の申し出をすれば辞められる」と定められています。
「就業規則の1ヶ月」と「民法の2週間」、どちらが優先されるのでしょうか?
答えは明確です。「民法(法律)」が優先されます。
就業規則はあくまで会社内のルールであり、国家の法律を超えることはできません。日本国憲法が「職業選択の自由」を保障している以上、会社が就業規則を盾にして、労働者を無理やり縛り付ける(強制労働させる)ことは不可能なのです。
したがって、極論を言えば「退職届を内容証明郵便で送って会社に到着してから、2週間後に会社に行かなくなる」あるいは「2週間経過」すれば、法律上は適法に退職が成立します。
3.【要注意】「法律の強行突破」に潜む、大きすぎるデメリット
「なんだ、じゃあ民法を盾にして、明日から有給を消化して2週間後に辞めればいいんだ!」
そう思われたかもしれません。しかし、元人事課長として、私は「法律を全面に押し出して、喧嘩別れのように強引に辞めること」は、最終手段にすべきだと強く注意喚起します。
なぜなら、強行突破には労働者側にも以下のような大きなデメリット(リスク)があるからです。
同業他社への「悪い噂」の流布
業界が狭い場合、「あいつは引継ぎもせずに、法律を振りかざして突然逃げた」という悪評は、驚くほどのスピードで転職先に広まります。同業のネットワークを甘く見てはいけません。あなたの今後のキャリアに致命傷を与える可能性があります。
残された同僚への「しわ寄せと恨み」
あなたが強引に抜けた穴を埋めるのは、嫌な上司だけでなく、一緒に頑張ってきた同僚たちです。円満な引継ぎを放棄することは、これまで築いた社内の人間関係をすべて焼き払う行為です。
退職後の手続きでの「嫌がらせ(遅延)」
法律上は適法でも、感情的に激怒した会社側が「源泉徴収票をなかなか送ってこない」といったリスクはゼロではありません。転職先での手続きが滞り、あなた自身が多大なストレスを抱えることになります。
4.後腐れなく、したたかに辞めるための「戦略」
本当に賢い退職とは、「法律という最強の武器を懐に隠し持ちながら、表面上は笑顔で円満退職を勝ち取ること」です。
まずは就業規則を尊重し、1ヶ月前には退職を申し出る。引継ぎのスケジュールを自分から提示し、「会社への配慮」を見せる。それでも不当な引き止めや脅しを受けた時に初めて、「私は法律の知識を持っていますよ」と毅然とした態度で交渉するのです。
「自分一人では、もう上司のパワハラや脅しに耐えられない……」
もしあなたが今、そんな限界の状況にいるのなら、無理をしてはいけません。一人で抱え込まずにプロを頼ってください。
当事務所(大阪労働問題解決支援センター)では、特定社労士が合法的な使者として「退職代行」を行います(道義的にあまりに身勝手な退職はサポートしかねます)。その上で退職後の社会保険や雇用保険手続きについてもアドバイスを行います。
また、サービス残業やパワーハラスメントといった労働問題も背景にある場合は、労働局等での「裁判外個別労働紛争解決制度(あっせん制度)」により、あなたの代理人として辞めた会社と交渉し、法的根拠に基づいた解決を図ることも可能です。
会社と無用なトラブルを起こさず、あなたの権利と次のキャリアをしっかり守る。そのためのご相談を無料でお受けしております。心身がボロボロになる前に、まずはお気軽にご連絡ください。
