【元人事課長が注意喚起】評価制度なき「一律ベースアップ」が会社を破壊する理由

このコラムは・・・

今回は物価高や人材獲得競争で一律賃上げに潜む

「従業員の不満」

について、現場目線で「正しい賃上げ方法」の一例を取り上げます。

目次

昨今、ニュースでは大企業の大幅な賃上げや「ベースアップ(ベア)」の話題が連日取り沙汰されています。この時期、中小企業の経営者様からも、次のような切実なご相談を多くお受けします。

「うちも世間に合わせて、基本給を上げた方がいいのだろうか?」

「賃上げを見送れば、社員が辞めてしまうのではないか?」

「新卒採用の初任給の動向はどうなっている?」

確かに、物価高騰への対応や人材定着のため、社員への利益還元は不可欠です。

しかし、大阪市を拠点に活動する特定社労士であり、元・財閥系専門商社の人事課長として30年間現場を見てきた私から、リアルな視点で「大切な注意喚起」をさせてください。

明確な「評価制度」を持たないまま、世間のムードに流されて行う「一律のベースアップ」は、会社を内部から破壊する劇薬になり得るのです。

その理由と、経営者が取るべき「正しい賃上げの戦略」について解説します。

労働法務の観点から見て、基本給の引き上げには「大きなリスク」が伴います。

それは「労働条件の不利益変更の禁止」という、極めて厚い法律の壁があるからです。

業績が良い時に「全社員一律で基本給を1万円アップ」したとします。しかし数年後、不況に陥った際に「業績が悪いから元の給料に戻す」ということは、原則としてできません。労働者本人の同意や、極めて合理的な理由がない限り、一度上げた基本給を下げることは法律上許されないのです。

さらに、基本給が上がるということは、「残業代の単価」や「退職金の算定基礎額」も自動的に跳ね上がることを意味します。

一律のベースアップは、経営の柔軟性を奪い、将来の固定費という名の重い十字架を背負う行為に他なりません。

法律上のリスク以上に恐ろしいのが、「組織風土の腐敗」です。

私はかつて、数多くの賃金改定や人事制度見直し、運用に携わり、一律の給与引き上げがどのような結果を招くか、現場で嫌というほど見てきました。

一律ベースアップを行った直後、社員は一瞬だけ喜びます。しかし、数ヶ月もするとこんな不満が社内に蔓延し始めます。

「なぜ、毎日必死に成果を出している自分と、指示待ちで何もしないあの人が、同じ金額だけ給料が上がるのか?」

会社に貢献している優秀な社員ほど、この「悪平等」に強烈な不満を抱きます。結果として、優秀な人材は「頑張っても評価されない会社」を見限り、転職していきます。

残るのは「ここにいれば、何もしなくても勝手に給料が上がる」と勘違いした、ぶら下がり社員ばかりになります。

良かれと思って行った一律の賃上げが、結果的にエース級の社員を追い出し、会社の競争力を削いでしまうのです。

では、中小企業はどうやって賃上げの圧力に対応すればよいのでしょうか。

答えの一つは、「基本給を一律で上げる」のではなく、「頑張った人が報われる仕組み(人事評価・賃金制度)を作り、その枠組みの中で給与をコントロールする」ことです。

定期昇給やベアはあくまで「企業間格差是正への対処法(世間相場へのキャッチアップ)」として最低限に留め、人事評価によって昇給に弾力性を持たせる制度を導入します。

具体的には、以下の3つの手法を実情に合わせて組み合わせます。

① 「手当」での還元(職能手当など)

基本給を直接上げるのではなく、「職能手当」などの形で引き上げます。これによりメリハリのある処遇を行いやすくなり、従業員も自分の立ち位置が「職能」という物差しで可視化されます。よりコンパクトに運用するなら、基本給を評価制度と連動させる仕組みも可能です。

② 業績連動型賞与の活用

固定費を上げるのではなく、利益が出た分を「賞与(ボーナス)」として還元します。あらかじめ賞与原資を決めておき、成果に応じて配分する方法をとれば、赤字の年には支給を抑えることができ、会社の存続を脅かしません。

③ 評価基準の明確化

「何を頑張れば、給料が上がるのか」という基準を明確にします。昇給を「会社の恩恵」ではなく、「本人が勝ち取った成果」に変えるのです。

賃上げは、単なるコストアップではありません。社員のモチベーションに火をつけ、業績を向上させるための「投資」であるべきです。

「うちには評価制度なんてないし、そもそも必要かどうかも分からない。どう作ればいいか分からない」

そうお悩みの経営者様は、ぜひ一度当事務所にご相談ください。

当事務所(大阪労働問題解決支援センター)では、単なる法律論ではなく、「元・人事課長」としての泥臭い実務経験と、特定社労士としての「法的防衛力」を掛け合わせた、実戦的な人事・賃金制度の構築を得意としております。

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