「残業代は払っている」は通用しない?ある日突然、労基署がやってきた会社の悲劇

このコラムは・・・

1.「数百万円規模の未払い残業代」という突然の経営リスクを未然に防ぐ重要性を知ることができます

2. 良かれと思ってやっている「独自の給与計算ルール」の危険性に気付くことができます

3. 労基署の「申告臨検(突然の調査)」のリアルな実態と、狙われやすい会社の特徴が分かります

目次

もし経営者や労務担当であるあなたがそう思っているなら、非常に危険な状態かもしれません。 今回は、私が実際に直面した「ある日突然、会社が崩れ落ちる瞬間」のリアルなエピソードをお話しします。

ある日突然、2名の監督官が会社にやってくる

それは本当に、前触れもなく突然のことでした。 労働基準監督署の監督官が2名で会社にやってきたのです。おそらく労働者からの申告による「申告臨検(※)」だと思われます。 (※申告臨検:労働者からの通報に基づき、労基署が突然立ち入り調査を行うこと)

彼らはその場で、以下の書類を直ちに準備するよう命じました。

  • 賃金台帳
  • タイムカード
  • 労働者名簿
  • 就業規則
  • 賃金規程
  • パソコンのログ記録

ありとあらゆる労務書類を徹底的にチェックされる、息の詰まるような時間が始まりました。

命取りになった「10分単位」の残業代計算

この会社は、決してブラック企業ではありません。むしろ、経営者は社員を大切に思い、毎月しっかりと残業代を支払っていました。

しかし、監督官から指摘されたのは「残業時間の10分単位での切り捨て」「ログイン記録とタイムカードとの乖離」でした。

会社としては良かれと思って(あるいは計算を楽にするために)導入していた「10分単位」の計算ですが、労働基準法では原則として「1分単位」での計算が求められます。また、臨検では、仕事をしていたという客観的証拠として、タイムカードは重要視されず、パソコンのログ記録や社内への出入りの記録(オートロック式の場合)を求められます。

その結果、監督官から下されたのは、「過去に遡って全員分の計算をやり直し、差額を支払うこと」を命じる『是正勧告書』でした。会社の責任者は監督署に呼び出され、この重い書類を受領させられたのです。

「いつまで遡ればいいですか?」教えてくれない監督官

地獄はここから始まります。 指定された期限までに是正報告書を提出しなければなりませんが、責任者が「一体、過去いつまで遡って計算し直せばいいのですか?」と尋ねても、監督官がはっきりと答えを教えてくれることはありません。会社側で判断し、法的に正しい対応をして報告しなければならないのです。(法律上の時効の援用を含め、はっきりとは教えてくれません)

この会社にとって唯一の救いだったのは、「残業代の単価(基礎時給)の計算方法自体は合っていた」ことでした。 もし、除外してはいけない手当(一部の家族手当や住宅手当など)を基本給から引いて計算していたら、「時間の再計算」と「単価の再計算」のダブルパンチとなり、資金繰りに致命的なダメージを受ける事態になっていたでしょう。

それでも結局、この会社は過去に遡って多額の差額支払いを実行せざるを得なくなりました。

崩れ去る「労使の信頼関係」の脆さ

なぜ、残業代を払っていたのに監督官は突然やってきたのか? それが定期的な調査だったのか、それとも社員の誰かが労基署に駆け込んだ(申告した)のか。会社がその真実を知ることは、永遠にできません。

しかし、仮にこれが私の推測どおり「社員からの申告」だったとしたらどうでしょう。 経営者にとっては、「労使双方の良心に沿って、良好な労働環境が構築されている」と信じて疑わなかったものが、たった一人の不満によって突然音を立てて崩れ落ちたことになります。

会社を守る防波堤は、経営者の「良心」や「社員との信頼関係」という、目に見えない脆いものであってはならないのです。

会社を「突然の崩壊」から守るために

「うちは大丈夫」という根拠のない自信は、危険信号です。 労働トラブルは、起きてから対処するのでは遅すぎます。是正勧告による多額の金銭的ダメージはもちろん、経営者や人事担当者の精神的疲労は計り知れません。

  • 今の残業代の計算方法は、本当に「法的に」正しいですか?
  • 「早く帰れ」と言いながら、終わらない仕事をカフェや自宅でしていることを黙認していませんか?
  • 就業規則や賃金規程は、実態と合っていますか?

少しでも不安を感じた場合は、手遅れになる前に、労務リスクの最前線を知る当センターにご相談ください。元財閥系商社人事課長であり、数々の修羅場を解決に導いてきた特定社会保険労務士が、貴社を「紛争に至らない強い体質」へと導きます。(本コラムは守秘義務に基づき、複数の事案をもとに匿名性を担保しています。)

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